[ ギア比は変更可能 ]
●クルマを購入した後で、自分の走行環境に合わせて最適なギア比を与えてくれるトランスミッション( 変速機セット )に交換する人はいません。ガソリンエンジンのミッションは極めて複雑で高価な機械装置であり、「市内の短距離通勤で渋滞が多い」 「隣の県まで毎日高速道路で通う」 「いつも通る道は山越えで坂が多い」 「重い荷物をよくクルマで運ぶ」等々の個人の事情に合わせてそれを変更する事は普通ありません。
●シングルスポーツ自転車には変速機がありませんが、よく見かける 「 変速機のないママチャリ 」 とはまったく別の、軽く抵抗の少ない走行感覚をもたらしてくれます。 しかもペダルのところのチェーンリング( 前

ギア・フロントスプロケット ) と、後輪軸のコグ( 後ギア・リアスプロケット ) は、多くの自転車パーツメーカーから、色々な歯数を持つパーツが発売されていて、ギア比を気軽に変更できるのです。
●右上の表は、優れた自転車を販売している各自転車ブランド製品の、販売時に取り付けられている前後スプロケットとギア比の事例紹介です。"唯一理想のギア比"  が存在しないことが伺えます。

 

 
[ シングルスピード自転車の理想のギア比 ]
●ギア比選択は個人的な問題で、誰にでも当てはまる理想の 「 黄金ギア比 」 などはありません。
ギア比が"個人的だ" というのは、多くの変数によって左右されるからです。
              1) 体 重    2) 筋 力    3) 持久力    4) 1日の走行距離    5) 飛ばし屋かのんびり屋か
              6) 荷物は多いか     7) 坂は多いか      8) 路面は荒れているか   9)日頃 向かい風は強いか etc.  

ギア比選びに魔法の公式はなく、実際に試してみることが最終的な解法です。とはいえ一般的に、街乗り用であれば、逆回転フリーホイール付きで、前チェーンリングが42歯、後ろコグが16か17歯 あたりのギア比 ( 2.63 〜 2.47 ) が扱いやすいかも知れません。
変速機付き自転車に乗っていても数秒に1回ガチャガチャ変速するわけではなく、『 よく考えたら走行中のほとんどの時間は○段ギアに入れっぱなしだった 』 などということが実態であったりします。 自分がよく自転車に乗る道の環境 と距離、そして体力などを勘案してそれら諸条件の "最大公約数的" なギア比を的確に選ぶと、 『 変速機がなくてもぜんぜん支障はないじゃないか 』 という満足をもたらします。
マウンテンバイクのシングルスピード車では「 2.0 : 1 」 程度の軽いギア比が推薦されたりしますが、未舗装の急な山道で乗るのでなければ、街中の路面がフラットな舗装路でそのギア比だと、漕いでも漕いでもスピードが出なくて腹立たしいギア比になってしまいます。
ちなみに友森工業社内で人気のあるギア比は、前44T×後16T の2.75です。 ただし当社のある境港市は大きな砂洲の上に開けた街であり、基本的にフラットで路側帯の広い道が多いので、自転車愛好者にとっては、かなり走りやすい環境であるといえます。

 

 

[ 同ギア比で 歯数が異なる場合 ]
●シングルスピードのギア比を 「何:何」 にするのか決めたなら、次は、どんな丁数の歯車の組み合わせでそれを実現するのかという問題があります。たとえば、36:12、 39:13、 42:14、 45:15、 48:16は、 全て 「3:1」 という同じギア比となります。 どの歯数が良いのか? それもまたトレー
 
ド・オフ( 二律背反 ) です。 大きな歯数(丁数) にする場合と、小さな歯数にする場合の、それぞれの長所と短所は上表の通りです
 

[ 時速25,30,40km/hの時のペダル毎分回転数( ケイデンス ) ]
●一般にスポーツ自転車ではペダルのクランクを1分間に90回転させる( ケイデンス90 ) ことを保つ走り方がよいと言われます。または平地において時速25km/h を1時間ずっとキープするような練習をすると良いなどとも言われます。それらは変速機つきのロード自転車の話なので、シングルスピード・
ライディングにどれだけあてはまる話なのかわかりませんが、時速25km/h 時のクランク回転数( ケイデンス ) の表をEXELで作ってみました。
時速25kmで走行しているとき、多段変速機つきのサイクリストの脚が毎分何回転しているかはそのとき選択しているギアに依るので、 一概に言えません。重いギアをゆっくりまわして25km/hかもしれないし、軽いギアで脚をシャカシャカ高速回転させて25km/hかも知れません。
けれどもシングルスピード自転車の場合には速度と脚の回転数の比は固定されています。脚を毎分2倍回すと速度は2倍。速度が乗ってきて1段上のギアに変速するということはありません。脚をゆっくりと回しているシングルスピード乗りは必ずゆっくりと走っているし、シャカシャカ回しているシングルスピード乗りは必ず飛ばしています。 ポーカーフェイスはなし。 というわけで、速度と脚回転数の表を示します。ただしタイヤの周長によって速度が変わってきますのでタイヤサイズ対応表にしました。
表中の車種名は "例えばこんな市販車がこのギア比" という程度の参考名です。 表の要点は 車種 ではなくて『 ギア比 と回転数 』です。