TEL 0859-47-2171  
 
 
[ 世界中で検索数が増加中 ]
下表は、世界でシェアトップの検索エンジンであるGoogleにおいて検索キーワードに 『 Single Speed 』 が使われた回数の増減をあらわしています。冬は減って夏に増加する季節変動を別にすれば、全体のトレンドは右肩上がりです。2008年のリーマンショック以後の世界不況期も、2007年に較べて増加しています。タイムリーな話題としては環境会議COP15が開催される北欧デンマーク( 日本以上に埋蔵資源の乏しい国で省エネや自然エネルギー開発に熱心な国です ) のコペンハーゲンは住民人口の1/3が自転車で通勤していてサイクルシティ( 自転車都市 ) としても良く知られているそうです。また優れたデザインの製品が多いことでも知られているデンマークではこのようなシングルスピードが販売されています( 参考 )。 さてこのように世界的に関心が高まっている 『 シングルスピード 』 とは何でしょうか。

それは、スポーツ自転車から変速機を取り去ってギア比を1速だけ( single speed )とした軽快な乗り物のことです。 自転車が発明された当初は変速機などなく、その後ニーズに応えるかたちで先人が苦労の末に開発した変速機。坂は軽いギアで楽に登れますし、平地では重いギアで速度を高めることができます。人々がそれを求めているから、変速機つき自転車が広まったことは間違いありません。そのようなせっかくの変速機を、あえて取り去る動機はいったい何なのでしょう。 どうしてそれが世界的に流行したりするのでしょう。

"世界的に流行中" と書きましたが、インターネット上で5年ほど前の海外新聞記事などを眺めると 「 あえて便利な変速機を取り去る改造を加える、新しい流行が話題になっている 」 という風に目新しいニュースとして書かれています。
けれども最近の記事では、もはやごく少数の変わり者が試すマイナーな嗜好ではなくなっています。スポーツ自転車メーカー各社がカタログに様々なシングルスピード完成車を載せているので、もう改造の手間もかかりません。 いまでは押しも押されぬメジャーな自転車ジャンルとして定着していると分かります。 ニューヨークにもロンドンにもコペンハーゲンにも、世界各地に巨大なシングルスピード・コミュニティがあり、各都市にクラブや愛好会が数多く存在しています。そうしたコミュニティのホームページや、愛好者のブログなどによって、様々な情報が発信されています。 それらを眺めると、どうやら以下のことが流行につながったようです。

[ なぜ世界の都市でシングルスピード・ロード自転車が増えているのか ]
シングルスピード自転車に対しては、当然の懸念があります。坂が上れないのではないか。信号発進がきついのではないか。
けれどもそれが深刻な問題であれば、世界中でこれだけ数を増やすはずがありません。「 変速できないハンデにもかかわらず流行した 」 のではなくて、「 変速しないメリットが 思いのほか魅力的であったために広まった 」 のではないかという推測が成り立ちます。 海外のシングルスピード愛好団体のHPなどを眺めると、おおよそ下記にまとめた項目の魅力から、シングルスピード車が流行したようです。

( 30段変速だって選べる最新多段変速自転車 )
最新のスポーツロード自転車は27〜30段の変速機を備えています。そのようなマルチスピード自転車では、体力エネルギーを効率的に速度に変換するギア比を、状況に応じてこまめに選ぶことができます。もし求めるものが最小限の体力で最大限の速度と距離を手に入れることであれば、マルチ変速自転車に乗って30段のうちのどのギアが最適なのかを選びながら走るのがよいでしょう。
( 誰もが効率を優先するわけではない )
けれども、自転車に乗ることそれ自体の喜びや健康のために自転車に乗っている方であれば、"経過時間" や "到達距離" などの、結果として出る 「 数値で測定可能な指標 」 は、それほど重視しなくてもよいのかもしれません。数字ではなくてむしろ走行体験の質をより重視している人にふさわしい自転車ジャンルの1つが、シングルスピードであるようです。
 
 
( 1速だけだと 抵抗が小さい )
 シングルスピードに乗ると無心で開放されたように感じるので、多段変速自転車で走るとき 「 今は何段目のギアを選ぶべきか 」 を判断することに走行時の心的エネルギーがどれだけ消費されているのかを、あらためて思い知らされます。
 またシングルスピードは実は効率的な乗り物でもあります。全ての状況に対応して完璧なギア比を提供するわけではないシングルスピードですが、走行する街にあわせて選んだギア比が運良く走行環境にマッチしているならば、変速機を持つ自転車よりもむしろ機械的に効率的だと考えられるのです。というのは、シングルスピード自転車では、マルチスピード自転車に取り付けてある、変速機・シフター・ケーブル・何枚ものスプロケット・余分に長いチェーン、テンショナー、などの重量が不要になるからです。  加えてマルチスピード車では前ギアと後ろギアのギア選択によってはチェーンを斜め掛けすることになるので抵抗を生じますが、シングルスピード車のチェーンは上から見ると常に1直線です。またマルチスピードでは力を伝達するためのチェーンが変速機プーリーの間をS字蛇行することでも抵抗を生じています。変速することを捨て去ると、低抵抗で軽快で身軽な感覚が、手に入るのです。
 
 

( 1速だけだと 手間がかからない )
 シングルスピード自転車はまた、マルチスピード自転車よりも丈夫で信頼できます。
まず下ばえに引っかかったりする変速機がありません。またチェーンが変速時に行き過ぎてスポーク側に落ちて挟まるようなことも起こりません。変速ワイヤーが伸びる度に調整する手間もかかりません。信頼性が高くてエコな乗り物です。 そしてマルチスピード車の後輪軸には枚数の多いギアカセットを車体右側に取り付けるためのスペースが必要なので、真後ろから見るとスポークの張り方は、片側に寄った狭い幅の中で左右非対称にオフセットされています。一方でシングルスピード車の後輪は、真後ろから見てスポークの張り方が左右対称で幅広く踏ん張っているので、より強いのです。

 
( ミニマリズム・シンプルさの美学 )
 海外のシングルスピ-ド車関連サイトを眺めていると、美的な感覚でそのジャンルを捕らえている記事にしばしば出くわします。ハイテクで便利な変速機などの資源を削ぎ落とす潔さ、 走行に最小限必要な基本構成に立ち返る再確認の姿勢、ゴチャゴチャした印象を与えないすっきりシンプルな外観であること、などなど モノだけではない総合的な魅力に心を惹かれている愛好者が少なくない様子です。  またそれは、1速しかないことを "やせ我慢する" という意味ではないようです。
むしろ1速しかないことで走ることが楽しくなる、というプラスの効果を、多くのシングルスピード愛好者が述べています。
←戻る    TOP    進む→