きめ
( 自転車フレームの場合はそのまま ) で、内径の穴は少し小さめのパイプを購入して、それを外も内も最小限削って使う( 労力が小さい
) ように仕上がり寸法を設定するのが、製造業における常識です。
●( 市場にある寸法の材料を賢く使う )
ちなみにパイプの外形は精密な目で見れば真円ではありません。自転車のフレーム用としてはなにも問題が無いのでそのまま用いられますが、何か別の部材にキュッとはまり込むような部品( H7等
)として用いる場合などには切削が必須です。例えば 「 図面上の仕上がり寸法をφ22mmとしておいて、左表にある外径φ22.2mmのパイプを仕入れ、それを0.2mm削って真円にする
」ような具合です。 真円のように見えるパイプでも切削をはじめると、外径の高い山は刃に当たって低い谷は当たらないので、まだらに削られていきます。したがって、仕上がり寸法をφ22.5などと設定すると、φ25.4のパイプを仕入れて径を2.9mmも削らなくてはならなくなり非効率です。
「 パイプを取り付けるはめ込み先の穴がφ22.5mm なのでどうしようもない 」 などという場合を除いて、機能に支障がない限り最小限の切削で済むように仕上がり径を設定することが普通なのです。
●( 市場に存在するパイプ径を用いたのだと思われます
)
スチール自転車のフレームに用いられているパイプ径も、なにやら自転車オリジナルっぽい特別な外径寸法ではなくて、上表にある寸法ばかりです。
鋼材メーカーにとって、もしくはパイプ製造装置メーカーにとって、自転車向け市場はそう大きなものではないはず。
また、タイヤの外径サイズだけが一定のまま、身長に合わせてフレームサイズを変化させる場合、 フレームのジオメトリは「 相似形で拡大縮小
」するわけではありません。サイズによって接合 角度が変わり、加えてパイプの長さが変わっても、ある特定車種のフレーム全体として変形に対
する特性を一定に保ちたいならば、理想のパイプ径は、同じ車種でもフレームサイズごとに微妙 に変える必要があります。 しかしそれに対応するほど小刻みに外径の異なるパイプを用意できるわけではないので、もともと
パイプ径に関しては、「 手に入る材料で可能な限り上等な料理をつくる 」 前向きな妥協が行われてきたのでしょう。 『 0.5mm刻みや1mm刻みの外径のパイプをいろいろと試す膨大な試行錯誤が行われた末に、自転車フレームの用いられるパイプが、自転車業界ならではの特殊な寸法である現在のφ25.4mmやφ28.6mmに落ち着いた
』 という歴史は、存在しないと思われます。 といっても非効率を避けて賢く妥協したj結果。 限られた資源や労力を、パイプ径の探求ではなくて別のことに振り向けた賢明さだといえます。
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