■( 山陰:中海圏域周辺の地酒のご紹介 )
当社が所在する境港市が面する中海圏域の地酒をいくつかご紹介します。
当社社員が、キュッと冷やした日本酒を、小型の金属製グラスでチビリと
口に含んでは、その個性の違い、その日の料理や体調によって今日は
どの銘柄が美味しくいただけるかな?、という ささやかな "発見" を楽しむ。
そのような呑み方での、一般化できない独断による、気ままな感想です。
 
 
 

 

■( 八 郷 :やごう )
鳥取県:大山山麓伯耆町『 久米桜酒造 』
音種が少なくピュアで聞きやすいソロピアノ風な、真面目で素直なお酒。
口に含んでやさしく、刺さらない。酔いが進んでもアルコールの刺激が
カッと刺激してくることが少なくてひたすら優しいので、宴が進んだ後で、
そこから更に飲み進むのにも適しているように思います。
口に含んでから一拍おいて現れるかすかな甘みは、シロップの香り。

 
 

 

■( 鷹勇 強力:たかいさみ ごうりき )
鳥取県:大山山麓琴浦町『 大谷酒造 』
音種は多くないけれども、ピアノに加えて曲芸のように爪弾くコントラバ
スが加わったような、一瞬の後味に強い個性がある、楽しい日本酒です。
口に含んでから一拍おいて現れるかすかな甘みに強い個性があり、
その "お米で作ったコーンフレーク" をイメージさせる、微かに香ばしい
芳香は、他と区別が容易です。酒米は「強力」という地場品種。

 
 

 

■( 千代むすび 純米吟醸:ちよむすび )
鳥取県:境港市『 千代むすび酒造 』
八郷と同じく、ソロピアノ系。野球の球種でいうと決してカーブやフォー
クではない、伸びのあるストレート系、真面目で素直なお酒。
個性的な風味のお酒を飲み較べた後で、口に含んでホッとするような優し
い日本酒です。水道水が美味しいことでは全国トップクラスである大山山
麓の各市町村と同じく、「境港市も水が良いのだな」ということを連想さ
せる優しさです。

 
 

 

■( 王祿 超辛口 直汲み:おうろく )
島根県:東出雲町『 王祿酒造 』
きりっとしたお酒です。醗酵の過程で生じた微炭酸がかすかに残っている
刺激もあってシャープさが強調されます。暑かった日の、喉が乾いている
晩酌の1杯目に注いで、期待通りにスカッとさせてくれます。
口に含んでから一拍おいて現れるかすかな甘みは、和菓子に用いる上白糖
の香り。

 
 

 

■( 月山 名水仕込み・純米酒:がっさん )
島根県:安来市『 吉田酒造 』
月山は、口に含むとまず優しい口当たりがして、一拍おいてから、甘みと
うまみの折り重なった和音がふわっと開いて消えていきます。
一般にうまみの正体はアミノ酸で、いわゆる発酵食品では、醗酵によって
もとの材料の何倍もアミノ酸が種類を増しています。イカの塩辛、納豆、
キムチ、鰹節 etc 。清酒で、アミノ酸の増大を連想させてくれるお酒は、
印象に残りやすいもの。後味に"うまみ"を感じることのできる日本酒です。

 
 

■( 羅深仙 原酒:らふせん )
島根県:大田市『 木村酒造 』
かなり個性的。利き酒をして他と区別することが、かなり容易なお酒です。
大抵の日本酒は、楽器の数が少ないピュアな楽曲をイメージさせるものですが、
このお酒は饒舌で複雑です。山陰中海圏域の地酒群の中での立ち位置は、
ウイスキーでいうと 「 ピートの香りが強いシングルモルト・スコッチ 」、
または 「 トカイ・アスーワイン 」 、 のような行き方であるように感じます。
この明確な個性は、好き嫌いがはっきり分かれそう。当社地酒調査員の場合、
冷蔵庫の常備レギュラーではないものの、3ヶ月に1度くらいの頻度で無性に
呑みたくなって、買い求めます。

 
 
■( 豊の秋 生しぼり: とよのあき )
島根県:松江市 『 米 田 酒 造 』
シャープさも、アミノ酸タペストリの複雑さも、遅れてくる優しい甘みも、併せて持っていると
感じられるお酒です。味覚は好みの問題だとしても、ひとに薦めやすいおいしいお酒だと感じます。
なお720ml瓶を開封して数日すると、後味の甘みの味わいが増したように感じられました。
また個人的に、ある、味の強いソースのパスタの味が残る口には、余り合わないように感じられました。
シャープでふくよかでうまみもあり立派な味のお酒。それでも合わせる料理によっては、ほかの
銘柄に譲るしかないところが、日本酒の面白いところです。
 
 
■( 開春 超辛口 : かいしゅん )
島根県:大田市 『 若 林 酒 造 』
上記の王祿はラベルに『 超辛・・ 』と表示があってアルコール度数が高めですが、口に含んだあとで訪れる拍目の和三盆のような甘みもしっかりと感じられます。超辛と名乗っていても甘い。
さてこの開春も超辛口と名乗っています。辛さが 『 アルコール度数高め 』 のことであるならば、2者は同分類でしょう。けれども開春は、口に含んで数拍後ろから来る波を身構えて待っていても、王祿のような甘みや 月山のようなアミノ酸攻撃 が訪れず、キリっとした酸味でさっさと締めくくってしまいます。
甘くない。男っぽい。 このページでご紹介している銘柄のなかでは、関西以西の甘いつゆのうどん店群の中に1軒現れた関東風のうどん店、という感じです。
注)j開春の限定生産純米酒 『 亀五郎 』 を味わう機会がありました。写真の超辛口純米酒とは全く違う味わいでした。
 
 
■( 岩泉 : 純米吟醸酒 )
鳥取県:日野郡江府町 『 大 岩 酒 造 』
幾日か日本酒を飲む日が続いて、今日は飲むのを止そうかという心持ちの日であっても、
飲みやすいお酒です。"水のように飲める" というのは手垢がついたような紋切り型の表現ですが、
そのように評するのがまさに適している感じ。手早くキュッと冷やそうと冷凍庫に短時間入れたつもりが、冷やしすぎて、うっすら シャーベットが混じったような状態になったときでも、これもまたいいな、と思わせました。
 
 
■( 王碌「渓」 : おうろく けい )
島根県:東出雲町『 王祿酒造 』 
メロンのような吟醸香の強い日本酒は、大衆酒との違いが誰でも分かる華やかさがあって、良い材料に手間隙をかけた、贅沢なお酒なのだな、と納得させてくれます。
日本酒でこんな果実みたいな味もあるのだな、こんな香りも日本酒の範疇だとはね、と。
 けれども次第に・・もしくは気分によって・・分かりやすい飛び道具じみたメロン風の香りなどに頼って違いを演出しない、大衆酒でさえ持っている「いわゆる日本酒の味覚の構造」を変えずに、ただそれを圧倒的に高めた "直球な日本酒" を夢想する日が来たりします。 王禄「渓」に一風変わった個性や飛び道具的ユニークさは感じられません。ただただ日本酒として美味い。そして、これはすごいな、これはすごいや。などとつぶやきながら飲むことになったりします。
 
 
■( 月山吟醸 無濾過生原酒 : がっさんぎんじょう )
島根県:安来市『 吉田酒造 』 
コンビニエンスストアでもブランド名を目にするような大メーカーの酒を宴会で勧められて半ばやむなくチビリと飲み干したり、法事の席で大メーカーのカップ酒を手にするくらいしか日本酒を飲まないという方々に話を聞くと「 日本酒はあまり好きではない 」 という回答をしばしば得ます。
そういう方に、この月山大吟醸の、高級メロンのような吟醸香が強く薫る日本酒を試してもらうと、「お米でつくってこんな果実酒みたいな味わいになるのか」と大抵驚かれます。下で紹介している稲田姫大吟醸も同様のメロン風の吟醸香が強く香りますが、その波のあとが違っていて、この月山はすっきりと消え去ります。 すぐに次のひと飲みに移ることができる優しい後味だと思えます。
 
 
■( 特選大吟醸 稲田姫 : いなたひめ だいぎんじょう )
鳥取県:米子市『 稲田本店 』 
静かな席で美味しいものを食べたくなった時に立ち寄る米子市の「稲田屋」さんでときおり頼むお酒です。女性的なメロンの香りが豊かにふくらんだあと、辛味のような男っぽい後味が口に残ります。上述の月山大吟醸はのどを通るなりすぐに次の杯をあおることができますが、この稲田姫大吟醸はのどを通ったあとで、ムニャムニャ、と淡く辛く残る赤ワインにおけるタンニンっぽい味わいをやりすごす2テンポを置いてから、次の杯に進む感覚です。それが、日本海の海の幸などをつつきながらゆったりと楽しむテンポに、よく合っていたりします。
 
 
■( +旭日 大吟醸: じゅうじあさひ 純米酒 )
島根県:出雲市 『 旭 酒 造 』
 
 
 
 
 
 
[ このページは 「鳥取 おいしい地酒」「島根 おいしい地酒」「米子 地酒」 で検索するとヒットします ]