●そのことを除けば、インテリアは素材も造りも上級車らしい高品質さを見せるので、室内はたいへん心地よい場所です。我々がテストしたプレミアムエディション装備車は、皮革張りスポーツシートや、シートヒーターや、11スピーカーを持つボーズ社のサラウンドオーディオシステムなどなど、各種装備が満載でした。ハンドル内の手が届きやすい場所には、オーディオの操作や自動運転の操作などのためのスイッチなど色々なツールが用意されています。間違いではありません。GT-Rなのにラクチン運転のための自動運転機能まで!! メーター類のあるパネルの中央に大きなタコメーターがあって、右にスピードメーターが、左に小型液晶画面が、配置されています。液晶画面にはさまざまな情報を示す色々なページがあり、2つの小さなボタンによってページを変更できます。速度計は340km/hまで刻まれていますが、実際の最高速度はおよそ310km/hであると言われています。
●タコメーターのレッドゾーンは7,000rpm以上となっています。そして、レッドゾーンの近くまで回転が上がってくると、シフト表示の背景の照明色がまずオレンジ色になり、そして赤色に変わります。しかし、インテリア空間内のちょっとした幸せを挙げるなら、それは多機能ディスプレイ装置しかありません。この7インチの液晶ディスプレイは、遠隔測定されたさまざまな情報をリアルタイムでまっすぐドライバーへと届けます。画面に触れてあらかじめセットしておいた情報ページを表示したり、各種のリストからどんな情報を表示するかを選んだり、それをカスタマイズしたりできます。画面のグラッフィックデザインは、あのプレイステーション用のゲーム「グランツーリスモ」の開発元であるポリフォニー・デジタル社が担当したそうです。このディスプレイでは、走行情報だけでなくてナビゲーションシステムやオーディオシステム、エアコンの管理なども表示して操作できます。
残りの室内空間では、ペダル類やコンソールパネル、運転席と助手席の間、ドアなどにあしらわれた、アルミニウム製の飾り材が目に付きます。
●さて、テストルートが田舎のワインディングロードに差し掛かったので、そろそろペースを上げていきます。私はオートマモードからマニュアルモードに設定を変え、トグルスイッチで、「R」モードを選びます。それは駆動力と安定性コントロールシステムを
「R( レース )」 設定の味付けにすると共に、最速のギアチェンジを行う設定です。そしてハンドル左に取り付けられているシフトレバーでギアをセカンドに入れてアクセルを踏みました。私の頭は猛烈な加速で後ろに反り返り、気がつく前にもう3速にシフトアップしていて、ギアチェンジの間でさえまったく緩まずに途切れなく加速していくので、どこまでも際限なく無限のパワーを持つエンジンであるように感じられます。この日産VR38DETTターボ付きエンジンは、そのレスポンスの速さにおいて並ぶものがありません。
●第3と第4のギアは、爆発でもしたように猛烈な勢いでクルマをコーナーから脱出させます。
それから、ハンドリングについて。恐ろしくトリッキーなコーナーに飛び込んだときでも、GTRは底知れないグリップ力を伴って全く落ち着き払ったまま曲がっていきます。スタンダードモードに設定したビルシュタイン社製可変ダンパーによってコーナーリングのあらゆる欠陥は吸収されて、カーブ途中の路面のデコボコだろうと、へたくそな運転操作だろうと、車体はまったく影響されないかのようです。この容赦ないハンドリング特性は、GT-Rの底知れないパフォーマンスをもっともっと発揮させたいという衝動に誘うので、いつの間にか、ほとんどのスーパーカーがバックミラーから消え去るような速度で移動していることにも気づかないくらいです。コーナーから出たばかりのところでちょっと早めにパワーをかけていくと、全輪駆動システムが前輪と後輪の間で駆動力を最適にバランスしてくれるので、わずかな逆ハンドルを当てながらGTRはかっ飛んでいきます。2級道路であるにもかかわらずそうしたハイペースドライビングを維持できるのは、急に速度を落したいときに当てにできる超高性能ブレーキによって、まったく安全な気分にGT-Rがしてくれるからです。
●ブレンボ社製の、前輪6ポットキャリパー・後輪4ポットキャリパーのブレーキは、直径38cmのフローティング・ブレーキディスクに強く噛み付いて、なんのドラマも無くあっさりと強力にスピードを消し去ります。ブレーキペダルを踏む感触もまったく完璧です。踏むと即座に恐ろしく強力なブレーキ力を発揮するのに、そんな時でも常に、更にもっと強く踏めばまだまだ減速力に余裕があるのだな、という余裕を感じさせてくれます。二重クラッチGR6ギアボックスはまったく素晴らしいものです。ギアチェンジがあまりに一瞬で終わるので、日産が言う僅か0.2秒のシフトタイムよりも更に速いのではないかという気がします。そして、ハンドル脇のパドルでシフトダウンする操作に完璧にシンクロ調和して行われるスロットルブリップのフォンフォンという音は、耳に心地よいものでもあります。
●2級道路での勇敢な高速ドライブの後、次のテスト道路は高速道路でした。ビルシュタイン社製ダンパーを快適モードに設定して、私は160km/hほどにまで速度を上げてみます。安定感抜群なので、自動速度運転のクルーズコントロールで遊んでみたりもしました。タコメーターの下にある小型液晶画面で、維持したい速度を設定できるのです。シフトダウンして湧き上がる加速を体験する楽しみには抵抗し難いけれども、そんな楽しみもすぐに速度リミッター(
サーキットに入った時だけカットされる ) によって妨げられます。190km/hくらいでリミッターが効いてしまうのです。そのくらいの速度では、GTRはあまりに平安で静かなままなので、一粒の汗もかいていないように感じます。短い高速道路テストの後一般道に戻って、オートマモードに設定を戻すと、トランスミッションは燃費を節約しようとして可能な限り高いギアで走行させます。それが効果を上げていることは、ディスプレイの燃料消費グラフによって確認できます。燃料消費量は一定時間区分ごとに計算されて表示されますが、全体で平均8km/L
であったなかで出した瞬間最高燃費は 11km/L ( 高速道路 )でした。
最後の一般道テストはドラッグレース型の急発進でした。0-100km/h の時間はまさに4秒以下だと感じられます。こうしたスタートをするためには、最初にトラクション&スタビリティ
コントロールのスイッチを切らなければなりません。そうすると、左足でブレーキを踏んでいる間に右足でアクセルを踏んでエンジン回転数を上げておくことができて、ロケットスタートが可能になります。ブレーキを離すとクラッチがつながって、4輪のブリヂストン20インチタイヤが路面にグリップしようと奮闘しながら猛烈に加速していきます。この凄さはとても印象的で、日産が言う
「0-100km/h 間 3.6秒」 というタイムに何の疑いもありません。
●私が2007年に体験した最高のドライブのうちの1つであったこの一般路上テストの後、GT-Rはテクニカルなコースを持つ仙台ハイランドサーキットに入りました。ここでは、GT-Rに関する2つの講義を受け、そしてとても限られた時間の間でしたがクルマの能力を試す試乗をすることができました。このサーキットの曲がりくねったうえに傾斜の付いているカーブを飛ばしても、このクルマは全く簡単で快適でした。まだ冷えたままでグリップが弱いタイヤで最初のコーナーの出口でパワーをかけると、特にトラクションコントロールとスタビリティコントロールを「R」にしていた場合、安定した横滑りをコントロールできることに驚かされました。タイヤが温まると、どんなに速度を上げても、グリップ力も一緒にどんどん増加していくようで、究極的に自信を持って飛ばすことができます。GTRはドライバーにもっと飛ばすようにせがんできますが、速度を上げるにしたがって、剛性の高いシャシーがその魔力を発揮するのを感じはじめます。