■[ 外国人ジャーナリストが驚嘆した 新型日産GTR初ドライブ 2007年12月 ] 
[ 12/04/2007: Nissan GT-R First Drive ]

●我々が北日本の仙台ハイランドサーキットに到着したのは、朝早くでした。周囲の丘や山々は朝の日差しの中で秋らしい素晴らしい色合いを見せています。

[ 記事と写真 : ディノ・カルボナーレ記者 ]

●しかし我々のほとんどは、周りの美しい風景には目もくれず、日産が用意した新型車に興味を奪われていました。周回路のそばのパドックには少なくとも20台以上の新型GTRが並べられており、早く試したくてウズウズしている自動車ジャーナリストたちによってテストされるのを待っています。2002年秋に旧R34型GT-Rが生産終了となって以降にGTRのエンブレムがついた日産車を目にすることはありませんでしたから、いささか長く待たされたと言えます。カルロスゴーン社長が 「次のGT-Rは日本市場専用モデルではなくて世界市場で販売される」 と約束していたので、開発陣は開発の最初期から、次の新型GTRは ポルシェターボ のような世界的に名声を得ているスーパーカーまでも蹴散らすくらいのクルマでなければならないと知っていました。そして先日の東京モーターショウにおいて日産は、新型GT-Rがあのニュルブルクリンクサーキットにおいてポルシェターボよりも速い7分38秒という驚異的なラップタイムを叩き出したと発表したのです。そのラップタイムの数字は尊敬に値しますが、ここ数ヶ月に見せられたり聞かされてきた性能や記録の数字はそろそろ置いておいて、我々自身の手で新型GT-Rに何ができるかをテストする時がやって来ました。結局のところ、ニュルブルクリンクのラップタイムがスーパーカーの全てなどということは無いのです。キーレスエントリーで乗り込んで、あらかじめテストルートがセットされたナビゲーションを起動すると、全く新しい3.8リッター・V6ツインターボエンジンを目覚めさせるために、私は運転席と助手席の間にある赤色のスタートボタンを叩きました。

●GT-Rのエンジンが大変に静かなアイドリング状態に落ち着くのを待ってから、私はギアセレクターをつかんで 「ドライブ」 に入れました。そしてオートマチックギア・モードを「オフ」にして、世界初の 「全輪駆動+トランスアクスル」 のギアを自分の思い通りにチェンジできるように設定しました。ちょうど日産350Zと同じように、ハンドルの角度と前後位置の双方が好みに調節でき、なおかつウィンカーなどの操作系もハンドルと一緒に調節できるので、快適な座席設定を見つけるのはとても簡単でした。しかし、座席調整の際にちょっとした問題 〜ほとんどすべての日本車で気になる点ですが〜 は見つけました。問題点は座面の高さ調整です。彼らは海外市場においてドイツのブランドのシェアを奪おうと考えているのに、なぜ座面を低くする調整機構を組み込まないのか、ちょっと私には理解しかねます。身長が180cm以上ある場合は着座位置が高すぎると思えるはずなので、日本国内試乗だけで売る車であればともかく、ヨーロッパと米国で発売されたときには、きっと苦情が集まると思います。

●そのことを除けば、インテリアは素材も造りも上級車らしい高品質さを見せるので、室内はたいへん心地よい場所です。我々がテストしたプレミアムエディション装備車は、皮革張りスポーツシートや、シートヒーターや、11スピーカーを持つボーズ社のサラウンドオーディオシステムなどなど、各種装備が満載でした。ハンドル内の手が届きやすい場所には、オーディオの操作や自動運転の操作などのためのスイッチなど色々なツールが用意されています。間違いではありません。GT-Rなのにラクチン運転のための自動運転機能まで!! メーター類のあるパネルの中央に大きなタコメーターがあって、右にスピードメーターが、左に小型液晶画面が、配置されています。液晶画面にはさまざまな情報を示す色々なページがあり、2つの小さなボタンによってページを変更できます。速度計は340km/hまで刻まれていますが、実際の最高速度はおよそ310km/hであると言われています。

●タコメーターのレッドゾーンは7,000rpm以上となっています。そして、レッドゾーンの近くまで回転が上がってくると、シフト表示の背景の照明色がまずオレンジ色になり、そして赤色に変わります。しかし、インテリア空間内のちょっとした幸せを挙げるなら、それは多機能ディスプレイ装置しかありません。この7インチの液晶ディスプレイは、遠隔測定されたさまざまな情報をリアルタイムでまっすぐドライバーへと届けます。画面に触れてあらかじめセットしておいた情報ページを表示したり、各種のリストからどんな情報を表示するかを選んだり、それをカスタマイズしたりできます。画面のグラッフィックデザインは、あのプレイステーション用のゲーム「グランツーリスモ」の開発元であるポリフォニー・デジタル社が担当したそうです。このディスプレイでは、走行情報だけでなくてナビゲーションシステムやオーディオシステム、エアコンの管理なども表示して操作できます。 残りの室内空間では、ペダル類やコンソールパネル、運転席と助手席の間、ドアなどにあしらわれた、アルミニウム製の飾り材が目に付きます。

●さて、テストルートが田舎のワインディングロードに差し掛かったので、そろそろペースを上げていきます。私はオートマモードからマニュアルモードに設定を変え、トグルスイッチで、「R」モードを選びます。それは駆動力と安定性コントロールシステムを 「R( レース )」 設定の味付けにすると共に、最速のギアチェンジを行う設定です。そしてハンドル左に取り付けられているシフトレバーでギアをセカンドに入れてアクセルを踏みました。私の頭は猛烈な加速で後ろに反り返り、気がつく前にもう3速にシフトアップしていて、ギアチェンジの間でさえまったく緩まずに途切れなく加速していくので、どこまでも際限なく無限のパワーを持つエンジンであるように感じられます。この日産VR38DETTターボ付きエンジンは、そのレスポンスの速さにおいて並ぶものがありません。

●第3と第4のギアは、爆発でもしたように猛烈な勢いでクルマをコーナーから脱出させます。
それから、ハンドリングについて。恐ろしくトリッキーなコーナーに飛び込んだときでも、GTRは底知れないグリップ力を伴って全く落ち着き払ったまま曲がっていきます。スタンダードモードに設定したビルシュタイン社製可変ダンパーによってコーナーリングのあらゆる欠陥は吸収されて、カーブ途中の路面のデコボコだろうと、へたくそな運転操作だろうと、車体はまったく影響されないかのようです。この容赦ないハンドリング特性は、GT-Rの底知れないパフォーマンスをもっともっと発揮させたいという衝動に誘うので、いつの間にか、ほとんどのスーパーカーがバックミラーから消え去るような速度で移動していることにも気づかないくらいです。コーナーから出たばかりのところでちょっと早めにパワーをかけていくと、全輪駆動システムが前輪と後輪の間で駆動力を最適にバランスしてくれるので、わずかな逆ハンドルを当てながらGTRはかっ飛んでいきます。2級道路であるにもかかわらずそうしたハイペースドライビングを維持できるのは、急に速度を落したいときに当てにできる超高性能ブレーキによって、まったく安全な気分にGT-Rがしてくれるからです。

●ブレンボ社製の、前輪6ポットキャリパー・後輪4ポットキャリパーのブレーキは、直径38cmのフローティング・ブレーキディスクに強く噛み付いて、なんのドラマも無くあっさりと強力にスピードを消し去ります。ブレーキペダルを踏む感触もまったく完璧です。踏むと即座に恐ろしく強力なブレーキ力を発揮するのに、そんな時でも常に、更にもっと強く踏めばまだまだ減速力に余裕があるのだな、という余裕を感じさせてくれます。二重クラッチGR6ギアボックスはまったく素晴らしいものです。ギアチェンジがあまりに一瞬で終わるので、日産が言う僅か0.2秒のシフトタイムよりも更に速いのではないかという気がします。そして、ハンドル脇のパドルでシフトダウンする操作に完璧にシンクロ調和して行われるスロットルブリップのフォンフォンという音は、耳に心地よいものでもあります。

●2級道路での勇敢な高速ドライブの後、次のテスト道路は高速道路でした。ビルシュタイン社製ダンパーを快適モードに設定して、私は160km/hほどにまで速度を上げてみます。安定感抜群なので、自動速度運転のクルーズコントロールで遊んでみたりもしました。タコメーターの下にある小型液晶画面で、維持したい速度を設定できるのです。シフトダウンして湧き上がる加速を体験する楽しみには抵抗し難いけれども、そんな楽しみもすぐに速度リミッター( サーキットに入った時だけカットされる ) によって妨げられます。190km/hくらいでリミッターが効いてしまうのです。そのくらいの速度では、GTRはあまりに平安で静かなままなので、一粒の汗もかいていないように感じます。短い高速道路テストの後一般道に戻って、オートマモードに設定を戻すと、トランスミッションは燃費を節約しようとして可能な限り高いギアで走行させます。それが効果を上げていることは、ディスプレイの燃料消費グラフによって確認できます。燃料消費量は一定時間区分ごとに計算されて表示されますが、全体で平均8km/L であったなかで出した瞬間最高燃費は 11km/L ( 高速道路 )でした。
最後の一般道テストはドラッグレース型の急発進でした。0-100km/h の時間はまさに4秒以下だと感じられます。こうしたスタートをするためには、最初にトラクション&スタビリティ コントロールのスイッチを切らなければなりません。そうすると、左足でブレーキを踏んでいる間に右足でアクセルを踏んでエンジン回転数を上げておくことができて、ロケットスタートが可能になります。ブレーキを離すとクラッチがつながって、4輪のブリヂストン20インチタイヤが路面にグリップしようと奮闘しながら猛烈に加速していきます。この凄さはとても印象的で、日産が言う 「0-100km/h 間 3.6秒」 というタイムに何の疑いもありません。

●私が2007年に体験した最高のドライブのうちの1つであったこの一般路上テストの後、GT-Rはテクニカルなコースを持つ仙台ハイランドサーキットに入りました。ここでは、GT-Rに関する2つの講義を受け、そしてとても限られた時間の間でしたがクルマの能力を試す試乗をすることができました。このサーキットの曲がりくねったうえに傾斜の付いているカーブを飛ばしても、このクルマは全く簡単で快適でした。まだ冷えたままでグリップが弱いタイヤで最初のコーナーの出口でパワーをかけると、特にトラクションコントロールとスタビリティコントロールを「R」にしていた場合、安定した横滑りをコントロールできることに驚かされました。タイヤが温まると、どんなに速度を上げても、グリップ力も一緒にどんどん増加していくようで、究極的に自信を持って飛ばすことができます。GTRはドライバーにもっと飛ばすようにせがんできますが、速度を上げるにしたがって、剛性の高いシャシーがその魔力を発揮するのを感じはじめます。

●GT-Rの設計では、低重心化だけでなくて、重量配分を完璧に近づけることにも、多くの配慮がなされています。そのことは、このクルマがサーキット走行のどんな状況下でも究極のバランスを示すことから明白です。ブレーキをガツンと激しく踏んで、ギアを4速から急に落としても、車体のテールが揺れたりはしません。全く安定して中立で平静を保っています。一般道を走った時と同じように、1740kgという重めの車両重量の影響は隠されています。あまりに速すぎる速度でカーブに突っ込んだときだけはアンダーステアが始まって重量の影響が現れはじめますが、その場合でもそこからカーブを回り込むことはとても簡単です。2周目に入ってトラクションコントロールとスタビリティコントロールなどの電子デバイスをオフにして走って私が思ったのは、タイヤのグリップ力の限界以上まで飛ばしたときでさえ、車体の基本性能として衝撃的なほどコーナリングが簡単だということでした。
このクルマは恐ろしくバランスよく調整されているので、駆動力によって向きを変えることがとても簡単で、また適度な重さのハンドルから常に車体やタイヤの情報が分かりやすく伝わってきます。しかし、この自走テストはまだこの日のクライマックスではありませんでした。GTRの開発ドライバーの助手席に乗ってサーキットを
 

2周したときに、プロの手にかかるとこの車がカーブでダンスを踊りながらどれくらい速く走ることができるか、それが私の走りとどれだけ違うかについて、私は知ったのです。その速さには本当に驚きました。低速シケインコーナーでさえ稲妻のような速度で向きを変えてしまうのにはまったく驚嘆しました。 1740kgのクルマがそんなに速く向きを変えるのは信じ難いほどで、物理学を全くものともしないかのようです!

●日産はGT-Rで本当にやってのけました。彼らは、ポルシェターボを蹴散らすクルマを創り上げることに着手して、まさにそれを達成しました。そして日産は、ポルシェの領分を侵害するべく、ポルシェの低価格版入門車であるケイマンと同じくらいの価格でこれを販売します。もっとも、これはGTRシリーズの始まりに過ぎず、2008年2月からテストを開始して12月には発売される、サーキット走行向けのチューニングタイプである「スペック-V」と呼ばれるという噂のモデルがあります。それはこのGTRより更に少し軽く、さらに少し強力で、さらに走りに焦点を当てています。恐らくベースのGT-Rより途方もなく高く500万円増はかかることになるでしょうが、時間と共にその価値があるかどうかが明らかとなってくるでしょう。
今のところ確かにいえることは、GT-Rが猛烈に高性能なクルマとして帰っきた、ということです!

 

 

 
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