[ 外国人ジャーナリストが GT-R と ポルシェターボを比較ドライブ 2007年12月 ] 
[ 12/12/2007: 2009 Nissan GT-R vs. 2008 Porsche 911 Turbo ]  by ビル・トーマス記者
 〜 GT-Rの詳細に関する前段省略 〜

[ ポルシェターボとの出会い ]
GT-Rを測る良い物差しとしてポルシェ911ターボを持ってきました。フランドル地方からはるばる荒れたハイウェイを一晩中運転して運んできた、その素晴らしい性能体験の後では、日産がこのクルマに匹敵するような性能を設計できたとは信じ難い気がしました。


ポルシェターボは古代からあるクルマです。「古代」といっても時代遅れという意味ではありません( その妙に狭いコックピットと直立したフロントガラスは別として )。私の言う「古代」とは、何十年もその性能を磨きぬかれてきた強固な蓄積の重みがあるという意味です。

たとえばギアチェンジは、全く無駄なガタつきがない強固な操作感を見せて完璧です。そして大きなハンドルが、まさにドライバーが望む場所にピッタリ配置されています。そしてエンジンは車体後部にあって、その強力な480馬力水平対抗6気筒( 全く乱れがないものすごいパワー )が比類なき馬力で車を撃ち出し、4つのタイア全てが道路にパワーを伝えます。

ポルシェ911ターボはもちろん第1級の現役プレーヤーです。おとなしい走りができて、必要があれば恐ろしく速く走れる、そのオールラウンド能力は巨大です。しかし、GT-R と ポルシェターボの2台を並べて比較運転するとすぐに、それほどのポルシェターボを GT-R がもう時代遅れのように感じさせてしまったと、理解することになります。

[ 新しい覇者 ]
GT-R の優れたバランスと車体制御は、ポルシェターボのドライバーが不安になるような荒れた高速コーナーであっても、驚異的な能力を発揮します。たとえサスペンションを硬めのスポーツ設定にしていても、ポルシェターボで GT-R についていこうとして、心臓が口から飛び出しそうになる瞬間を何度も体験しました。ポルシェターボのサス設定は「スポーツ」でもまだ柔らか過ぎるようでフワフワして、そのうえ後部の重量物であるエンジンが車体後部を外側に大きく投げ出そうとするので、サスペンションの車体をコントロールする力が欠けているようでした。対照的にGT-R では、車体の基礎的能力として剛性が極めて高く、車体のコントロールは融通性があり、流れるようでした。

コーナリング中の GT-R は、アクセル開度一定の旋回であれ、ブレーキを残しながらの旋回であれ、まったく素晴らしいです。なにがあろうとも常にタイヤはグリップし続けます。滑りやすい路面はむしろ GT-R の長所を引き出すかのようです。全輪駆動システムとトラクションコントロールがうまく働くので、濡れたコーナーを抜ける度に、私の GT-R はポルシェターボを置き去りにしました。 それは単に私がポルシェターボよりも早くアクセルをオンにできたという操作レベルの話ではなくて、圧倒的に自信を持ってコーナリングできたという心理的なレベルの大きな相違の話でもあります。

GT-R は、本当に特別なクルマです。あなたがGT-Rを試したなら、熟練ドライバーがポルシェターボからありったけのパフォーマンスを絞り取って必死に走っている間、GT-R ならばあなたのママでさえが同ことができるだろう、という印象を得ます。ポルシェターボのドライバーがマニュアルミッションの手動変速と格闘している間も、ミリ秒で終わる超高速なマニュアル風自動変速を上げ下げして。

[ それは良過ぎるクルマでしょうか? ]
この質問の論点は、GT-R の高過ぎる自動制御能力がドライビングの楽しみをそぐことはないだろうか、ということです。

そんなことはありません。そうしたいなら、GT-R の全ての自動システムをオフにすることもできるのです。そして全てをオフにした場合でも、基本的な車体バランスが究極的に高いので、サーキットを走るレーシングドライバーが望むような喜びでさえ備えていることは確かです。実際は 3,800ポンド( ポルシェより170増 )の重さがあるのですが、GT-R はそれほど重い感じがしません。その凄いパワーとトラクションコントロールと自然なボディバランスが、速度を維持したままコーナーを曲がれるという強固な感触を与えて、あのニュルブルクリンクサーキットを ( 部分的に濡れた路面であったのに ) ポルシェターボよりまるまる2秒も早く7分38秒で周回させたのでしょう。

ポルシェターボと較べると、つま先ぶんほど GT-R の方が上だという気がします。そう感じるのは、それが事実だからです。
GT-R は大きい車ですが遅くはありません。我々「bahnテスト」 はそれを証明しました。4速ギアでエンジン回転数が中ほどの状態から、ラジオの秒読みに合わせて、私の GT-R とそれに並んだポルシェターボが、同時にアクセルを一杯に踏み込んだのです。あの超絶的中間加速を持つポルシェターボが、ゆっくりと後退していきました。 非常にゆっくりとでしたが。 それは、GT-Rの超能力的なパフォーマンスを引き立てただけでした。

[ 最高たちの中でも最高 ]
どんな状況でも究極の能力を発揮する点で、GT-R は私がこれまでに運転した中で最高の車だということに疑いがありません。それは、ポルシェターボとほとんど同じくらい速いので、それはつまり地球上のほとんどどんな車よりも速いということです。しかもポルシェターボよりも自信を持ってコーナーを曲がることができます。GT-R の方がより室内が広く、実用的で、より進んだ最新式のギアボックスも持っています。GT-R は、路面やカーブが慎重を要するような状況になったときにこそ信頼できる、偉大で強固なクルマです。
サーキットに行って疾走し、そしてそれから、サスペンションをソフトに設定し、オートマ変速モードに設定し、BOSE製のオーディオを鳴らして、極限の走りの痕跡も無く、のんびりと走行して街に帰っていく。

あ、それから価格のことを忘れていました。ポルシェ911ターボは100,000ドル( それはそのような素晴らしい車にふさわしい価格です )くらいで手に入りますが、GT-R はおよそ40,000ドル少なくしかかかりません。

開発チーフエンジニアの水野氏は正しかった。値段を考慮しなくても、この車に競合車はありません。GT-R が発売されると素性を隠した人間によって買われてからドイツのシュツットガルトのポルシェ社に送られて徹底的に検証されるでしょうが、ヨーロッパでGT-Rが最初に発売されるのはまだ先です。そして GT-R にはさらに強力でより軽い V-Spec バージョンが控えているので、ポルシェが GT-R のすぐ後ろについていられる時間はそう長くありません。

 

※もとの記事のサイト→

 

訳者注) GT−Rの驚きの一つは、事前に発表されたGT-Rの性能諸元や近年発売された世界の高性能車の試乗体験などから
     世界の自動車評論家たちが だいたいあんな感じのクルマだろうな と想定していた従来基準の予想をはるかに超えてい
     たことのようです。従来の判断基準とは全く別次元であると。日本の量産車メーカーが本気を出すと、売価に糸目をつけな
     いで性能を追い求める世界のスポーツカーメーカーの本気を超えることができると証明したことのインパクトが大きいのだ
     そうです。 日本車はへなちょこなクルマも出しているかもしれないけれど能力がないわけじゃない。やればできるんだと。
     日本メーカーが本気でやればできるそのレベルは、世界が唖然とするほどの成層圏的な達成高度になりえるのだと。

 
[ GT-R事例1 ]    [ GT-R事例2 ] 
 

[ GT-R の リアピラーの折れ線 ]

[ クルマ離れ?ご冗談を ]

[ どうしてこんなに平静に爆速なのか ]

[ 日本のモノづくりは野茂イチロー ]   [ 自動車の採点評価にAHP法 ]